ビジネス上で人に行動してほしいと思った時に命令ばかりするのはあまり望ましくありません。
相手も人間ですから考えて行動する力は持っています。
人を信用することも大切ですが、それと共に褒めることも重要な要素です。
ビジネスは一人でできませんから、パートナーや部下に望ましい行動をしてもらうことが結果を左右することもあります。
そこで褒めるテクニックを使って行動を引き出そうとするわけですが、どうして褒めることが行動させるために有効なのか本質を考えていき上手に活用できるようになりましょう。
ビジネスで一般に考えられている褒めることの効果に関する考察
褒めることの効果を考えるときに有効になるのが行動科学の考え方です。
人の行動と言うのは強めたり弱めたりすることができます。
人の行動を強めることを「行動の強化」といい、弱めることを「行動の弱化」といいます。
そして、相手の行動を「消去」することもできると言われています。
「行動の強化」の簡単な説明は、パブロフの犬について考えると分かります。
パブロフの犬と言うのは、ベルを鳴らしただけでよだれを垂らすようになった犬のことです。
この犬はエサを与えられるときに毎回ベルを鳴らしてから与えられます。
犬はエサをみるとよだれを垂らして待ち構えています。
エサを見ると同時にいつもベルの音が鳴っていると、いつしかベルの音がエサをもらえる合図だと学習してしまい、エサを見なくてもベルの音が鳴るだけでよだれが垂れてくようになります。
どうしてこのようなことが起きるのかというと、よだれが出る原因はエサを見ることですが、エサがない状態からエサがある状態になるときのきっかけが「ベルの音」になってしまったからです。
要するにベルの音がエサが出てくる合図に変わったからです。
このことを強化学習と言いますが、あるきっかけで行動が誘発されるように学習してしまうわけです。
この原理は何の変哲の無い刺激(ベルの音)でも、望ましい刺激(エサ)と一緒に常に与えられ続けると、望ましい刺激に対する反応(よだれが出る)になってくる、というものです。
これを人間の行動に対して当てはめてみましょう。
まず、人間にとって望ましい刺激を考えてみましょう。
人それぞれでしょうが、お金をもらえるというのは一番大きな動機付けになるのではないでしょうか?
しかし、今回はお金を望ましい刺激と考えるのではなく、タイトル通り「褒めること」を望ましい刺激として考えていきましょう。
褒められて嫌な人と言うのはいませんからね。
行動科学でいうところの褒めることの効果というのは、褒めることを行動を誘発させるための刺激として、何か行動してほしいことをしたら毎回褒めるということを繰り返していけば、行動を促すことができるという考え方です。
行動科学の考えでは人に行動させるための褒める効果は不十分
パブロフの犬の説明から褒めるという望ましい刺激が行動を強化することに影響を与えていることについて理解していただけたのではないかと思います。
しかし、人間はそこまで単純な生き物ではありません。
行動をするためのきっかけには感情や思考などが複雑に絡み合っているため、毎回褒めることをして行動を強化しようとしても思い通りにはなりません。
やはり、人間が行動するためには褒めるという外的な刺激ではなく、自分の内側から自発的に行動を起こせるように促していく必要があります。
褒めることは人間の行動を促すための自己効力感を高める
褒めることの本当の効果というのは、褒められた人の人格を尊重することにあります。
褒めるということは、その人の行動や人格そのものを認めてあげることにつながります。
すると、「自分は存在してもいいんだ!」という気持ちが強くなって、やる気やモチベーションがアップします。
やる気やモチベーションがアップすると、自分で考えて行動するような自発的な行動を増えていきます。
ビジネスではお互いが自発的により良い行動をしあうことによって大きく成長していくことができるのです。
そのため、褒めることで相手を操るように行動を促すのではなく、褒めることは相手を尊重して認めてあげること、という認識を持つ必要があります。
同じ「褒める」ことかもしれませんが、意図の違いによって全く別の結果になり得ることもあるのです。
「どうして人を褒めた方が行動を促せるのか?」の本当の理由を踏まえて、どのようにビジネスパートナーや部下と接していけばいいのかを考えることが大切ですね。
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